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「コンプガチャ」規制検討は、ほんとうに任天堂のビジネスモデルに影響がないのか?

消費者庁の「コンプガチャ」規制検討は任天堂のビジネスモデルと無関係ではない、と私が考える理由 39l.jpg 消費者庁コンプガチャ規制の検討に入ったことが話題になっていますが、SankeiBizがそれによって任天堂のビジネスモデルに影響があると指摘したことでちょっとした騒ぎになっています。
以下引用 収益モデル再構築も  一方で、インターネット課金ビジネスを取り入れようとする家庭用ゲーム機メーカーにとって、当局の規制は収益回復策への大きな妨げとなる。  「構造的に射幸心をあおり、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、お客さまとの関係が長続きするとは考えていない」  任天堂岩田聡社長は、ガチャ課金を取り入れることはない考えを示している。ただ、追加のゲーム内容のダウンロード販売も本格化させる任天堂は、携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」のダウンロードソフトを小売店の店頭やウェブサイトでも、購入できる決済方式を8月から導入するなど、新しい課金ビジネス作りの真っ最中。当局の規制が水を差すことがないよう、盤石のモデルを構築しなければ、高収益体質を取り戻すことは難しい。(高木克聡) ソース:「コンプガチャ」規制検討で暗雲 SNSゲーム大手2社、株価急落
任天堂岩田聡社長は、ガチャ課金を取り入れることはない考えを示している。と書きながら(規制の影響で任天堂が)高収益体質を取り戻すことは難しい。と結ぶあたり、確かに悪意に満ちたこじつけのような記事です。 コンプガチャになんの関係もない任天堂を持ち出して結論でケチをつけるあたり、ガチャに興味のないまともなゲーマーなら怒りを感じるのも無理はありません。 社長自らガチャを否定しているとおり、任天堂コンプガチャからもっとも縁遠い企業だからです。 では、今回の規制は任天堂のビジネスモデルにほんとうに影響がないのでしょうか。 私の考えでは、現状のビジネスモデルには影響がないが、(記事で指摘しているとおり)今後の新たなビジネスモデルには影響がないとは言えない、と思います。 では、記事が指摘する新しい課金ビジネスとはなんでしょうか。 それは4月27日の任天堂決算説明会で社長自らが語っています。
以下引用 先の「ニンテンドーダイレクト」で、2Dのスーパーマリオの完全新作、『New スーパーマリオブラザーズ 2』を8月に発売することをお伝えしましたが、このソフトから、従来のパッケージ形態でのソフト販売に加えて、パッケージソフトのデジタルディストリビューション、いわゆるダウンロード販売に取り組むことにいたしました。これ以降は、当社発売のソフトについては、原則として、パッケージとデジタルの2つの形態で、併売させていただき、お客様に選択していただけるようにいたします。 (中略) 一般的にソフトのデジタルディストリビューションでは、販売に小売店さんが介在しない形態を目指すというアプローチが主流のようです。しかし、私たちは、小売店さんに能動的に関与していただくアプローチを選択することにしました。 (中略) 小売店さんの店頭や、小売店さんのオンライン・ショッピングサイトで、商品の選択と購入決定、そして決済を行っていただき、そこで16桁のソフト引き替え番号を発行していただいて、それをご覧いただいているように、ニンテンドーeショップに入力していただくということで、購入が可能になる仕組みがすでに用意されています。 「一見、面倒に見えるこんなことに何の意味があるのか」と感じられる方もおられるかもしれません。しかし、このように小売店さんの店頭で支払いを済ませるという方法は、多くのお客様がすでに慣れておられるがゆえに、わかりやすく、かつ、心理的な抵抗も小さいという特徴があります。現在、ダウンロード販売の障害になっていることとして、クレジットカード番号を入力することを不安に思われるお客様がおられることや、年齢によってクレジットカードや携帯電話での決済手段がご利用いただけないお客様がいらっしゃることなどがありますから、お客様にとって「いつも慣れている方法でソフトにお金を支払っていただく」という方法は、お客様に購入いただくハードルを下げることにつながると感じています。 ソース:2012年4月27日(金)決算説明会
これはゲーマー向けではなく、投資家や株主へ向けた説明会で語られた内容です。 誤解を恐れずに要約すると 任天堂はネット経由での商品のダウンロード販売を拡大する」 「子供でも気軽に買えるようにDLCを小売店の店頭で販売する」 「店頭で購入した番号をeショップで入力するとデジタルコンテンツがダウンロードできる仕組みは既にある」 ということです。 私が一番最初に思いついたことは、 いまコンビニで売ってるポケモントレーディングカードDLCをつけて売れば儲かるだろうな。カードと同じでどのポケモンが出るか分からないようなランダムなコンテンツなら、目当てのものが出るまで子供はカード=DLCを買い続けるだろうな。 ということです。 もちろんゲーマーであれば、任天堂がそんなポケモンの商品価値を落とすような真似をするわけがないと知っています。 しかし、この岩田社長の説明は投資家向けに新たなビジネスモデルとして説明されたものです。 投資家は当然、そんなビッグビジネスチャンスがあり、任天堂がそういうビジネスをはじめようとしていると考えるでしょう。 もちろん、正式決定のまえから「やりますよ」という会社はありませんから、岩田社長がどれだけ「やりません」といっても、いつもどおりそのうちやるだろう、と考えたことでしょう。 ところが、このやり方をしてしまうと、今回のコンプガチャ規制の動きに驚くほどよく似ていて、連動してしてしまいます。 「カード」「ランダム」「判断力のない子供でも買える」「確率を恣意的に設定できる」等々。 コンプでこそありませんが、それこそガチャそのものです。 社長が「任天堂はガチャをやらない」といっても、ポケモン任天堂のゲームではありませんし、投資家にとってはガチャが出来る仕組みがあるというところが重要です。 任天堂スマートフォン向けにゲームを出すことは考えにくく株価が低迷しているいま、任天堂の切り札として投資家が期待してもおかしくないビジネスモデルです。 じっさい今すぐにでもやって欲しいところだったでしょう。 ところが、今回コンプガチャ規制の動きが出てきたことで、少なくとも任天堂がとれるビジネスモデルの一つが封じられたわけです。 ゲーマーにとっては最初からやるはずのないポケモンガチャが出来なくなったからといって、任天堂が痛くもかゆくもないのは承知ですが、投資家にとってはそうではありません。 今日任天堂の株価は1万円を割り込む場面がありました。 SankeiBizがむりやり任天堂を引き合いに出してバッシングしている、という意見は少し単純すぎる気がします。 (もっとも、同様のビジネスを考えていたのは、むしろ任天堂以外の企業のような気がしますが……。) 画像参照:2012年4月27日(金)決算説明会